農村の人間関係は、ちょっとしたヤクザ映画だった。
農村地域に入って知った、顔役・本家分家・後ろ盾の話
僕は都会育ちだったので、農業を始める前は、「畑を借りて野菜を作れば農家になれる」と思っていました。
けれど、実際に農村へ入ると、契約書にも農業の教科書にも載っていないルールがありました。
それが、人間関係です。
初めてその空気に触れたとき、僕は思わず違和感を少し感じました。
「これ、ちょっとしたヤクザ映画みたい。」
もちろん暴力の話ではありません。
顔役がいて、紹介者がいて、修行先があって、地域ごとに独特の空気がある。
そして最初に、きちんと筋を通す。
そんな、外からは見えない世界の話です。
肩書きのない「顔役」がいる
どの地域にも、
「あの人には最初に挨拶へ行った方がいい。」
と言われる人がいます。
いわゆる地域の顔役です。
ただ、顔役になる理由は地域によってさまざまです。
昔から続く家柄だったり、広い面積を耕作していたり、地主として土地を持っていたり、地域活動を長年支えてきたり。
あるいは、純粋に人格者として慕われている人もいます。
外から来た新規就農者には、そんなことは何も分かりません。
土地を正式に借りたとしても、それだけで地域の一員になれるわけではない。
どこの縄張りかも知らずに、いきなり店を出す。
任侠映画でいえば、そんな感覚に近いのかもしれません。
まず誰に話を通した方がいいのか。
その順番を知ることが、地域へ入る第一歩でした。
「どこの農家で修行した?」は身元確認だった
就農したばかりの頃、僕は何度も聞かれました。
「どこの農家で修行したの?」
最初は、農業技術や経歴を聞かれているだけだと思っていました。
でも、今振り返ると違いました。
誰がこの人を知っているのか。
誰の紹介なのか。
何かあったとき、誰が話をつなげられるのか。
修行先を聞くことは、経歴というより身元確認に近かったのだと思います。
僕の修行先は、地域に顔が広い農家さんでした。
畑を借りることになったとき、
「この地域なら、まず〇〇さんへ挨拶へ行った方がいい。」
と教えてもらいました。
さらに、その方の好物まで教えてもらい、手土産を持って挨拶へ行きました。
最初に筋を通したわけです。
もちろん、それだけで地域に受け入れられたわけではありません。
でも、地域との最初の関係づくりとしては、とてもいいスタートを切ることができました。
同じ苗字でも、本家と分家がある
農村では、同じ苗字の家が何軒もある地域があります。
苗字だけでは、誰のことか分かりません。
僕が、
「〇〇さんがさ。」
と話すと、
「どっちの〇〇さん?」
と聞き返されることがあります。
そこから父親の名前、屋号、家の場所まで説明して、ようやく人物が特定されます。
さらに地域によっては、本家と分家という考え方が今でも残っています。
同じ苗字だから同じ立場ではありません。
どの家から分かれたのか。
誰と親戚なのか。
代々どの土地を受け継いできたのか。
そんな家系図が、地域の人たちの頭の中には入っています。
登場人物一覧と家系図がないと途中から分からなくなる。
まるで長編任侠映画を見ているような感覚でした。
こちらは初対面。でも向こうは知っている。
初めて畑を借りた地域で、まだ話したこともない農家さんから、
「アップヒルくんだよね。」
「〇〇さんのところで修行してた人でしょ。」
と声を掛けられたことがあります。
こちらは初対面なのに、向こうは名前も経歴も知っている。
新入りの情報が、すでに地域へ回っている。
そんな感覚でした。
農家同士は、親戚、昔からの付き合い、地域活動、直売所、農協など、さまざまな場所でつながっています。
そのため、良い評判も悪い評判も驚くほど早く広がります。
だからこそ、最初の挨拶だけではなく、普段の振る舞いも見られているのだと思います。
一方で、関係ができれば本当に助けてもらえます。
機械が壊れたとき。
畑で困ったとき。
知恵や人を貸してくれる。
面倒さと心強さは、いつもセットでした。
10年後、聞かれる側になった
あれから10年。
最初は顔役を教えてもらい、手土産を持って挨拶へ行く立場だった僕も、今では少し立場が変わりました。
新しく就農する人が地域へ入ってくると、
「アップヒルくん、あの人どんな人?」
と、顔役から聞かれることがあります。
僕が顔役になったわけではありません。
でも、「あいつなら知っている。」
そう思ってもらえるくらいには、信用を積み重ねてこられたのだと思います。
紹介してもらう側だった僕が、今では地域と新しい人をつなぐ側になることもある。
それは、農業を10年続けてきた中で得た、目には見えない財産なのかもしれません。
コミュニティには、その場所なりの作法がある
オンラインでもオフラインでも、コミュニティには、その場所なりの礼儀があります。
農村も同じです。
受け入れてもらうには、農業技術だけでは足りません。
明るく挨拶をすること。
分からないことは素直に聞くこと。
地域のお作法を尊重すること。
結局、最後にものをいうのは、威圧感でも家柄でもありません。
毎日の挨拶と仕事を積み重ね、「この人なら一緒にやっていける。」と思ってもらえるかどうかです。
農村では、畑の契約書より先に、人間関係の筋書きがあります。
そして、その世界で信用されるには、派手な啖呵より、毎日の挨拶の方がよほど効く。
10年農業を続けてきた僕が、一番強く感じていることです。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。これからも、畑や日常生活で感じたことや、野菜づくりを通して見えてきた生き方の話を書いていきます。よかったらフォロー、無料購読登録してもらえるとうれしいです。
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サブスタックも農村と同じですね。
サブスタックは寄り合いは少ないかも知れませんけどね。
🦆
郷に行っては郷に従え。村社会ですね。
でも、気に入られてしまえば、逆に居心地がいいのかしら🤔