9日だけ見守った、ピュアちゃん
白とうもろこし畑で出会った、小さなホオジロの雛の話
白とうもろこし畑の中に、小さな巣があった。
最初に見つけたとき、そこにはホオジロの雛が2羽いた。
その日から、畑に行くたびに少しずつ様子を見ていた。
そして、その様子をSubstackにも投稿していた。
たぶん、ただの畑の記録のつもりだった。
でも今思えば、それはピュアちゃんの成長記録でもあった。
見つけた日。
2羽で口を開けていた日。
少しずつ成長しているように見えた日。
1羽になってしまった日。
そして最後に、巣ごと消えてしまった日。
振り返ると、見守ることができたのは、たった9日間だけだった。
自分だけで見ていたつもりだったけれど、気づけば読んでくれている人たちにも、少しずつ見守ってもらっていたのかもしれない。
とうもろこしの茎と茎のあいだ。
葉に隠れるように、器用に作られた小さな巣だった。
普段なら、畑を見る目はどうしても農家の目になる。
実は太ったか。
虫は入っていないか。
獣に倒されていないか。
収穫まで無事にいけるか。
そんなことばかり考えながら、白とうもろこし畑を歩いている。
でも、その巣を見つけた瞬間だけ、少し時間が止まったような気がした。
命を育む畑に、自分が育てている白とうもろこしだけではない、別の小さな命があった。
気づけば、ピュアちゃんと呼んでいた。
ピュアホワイトの畑にいたから、ピュアちゃん。
最初は、少し軽い気持ちだったと思う。
でも毎日見ているうちに、その名前はただの呼び名ではなくなっていった。
とうもろこし畑の中の、もうひとつの暮らし
ピュアちゃんたちは、親鳥が来るたびに大きく口を開けていた。
まだ目もよく見えていないような、小さな体。
赤く透けた皮膚。
少しずつ生えてくる産毛。
巣の中で寄り添う2羽の姿。
農家としては、白とうもろこしの成長を見に行っているはずだった。
けれど、いつの間にか、とうもろこしの様子を見るついでに、ピュアちゃんの様子も見るようになっていた。
無事かな。
大きくなったかな。
今日もちゃんと生きているかな。
9日間しか見守れなかったけれど、その間、畑へ行く理由がひとつ増えていた。
白とうもろこしの実を見る。
倒されていないか確認する。
そして、ピュアちゃんを見る。
ほんの少しの時間だったけれど、畑の中にもうひとつの暮らしがあるような気がしていた。
畑という場所は不思議だ。
こちらは生活をかけて作物を育てている。
でも、そこには鳥もいる。
虫もいる。
獣もいる。
人間が線を引いて「ここは自分の畑だ」と思っていても、自然の側から見れば、そこはただの生きる場所なのかもしれない。
白とうもろこし畑は、自分にとっては仕事場であり、勝負の場所だ。
でもピュアちゃんにとっては、生まれた場所だった。
巣立つところを見たかった
ある日、巣の中の雛が1羽になっていた。
最初は2羽いたはずだった。
けれど、片方がいなくなっていた。
何があったのかはわからない。
弱かったのかもしれない。
巣から落ちてしまったのかもしれない。
それとも、何かに狙われたのかもしれない。
畑では、答えがわからないまま残ることが多い。
それでも、残った1羽のピュアちゃんは、まだ生きていた。
小さな口を開けて、親鳥を待っていた。
だから、なんとかこのまま大きくなってくれないかなと思っていた。
できることなら、巣立つところを見たかった。
白とうもろこしの葉のあいだから、初めて外の世界へ飛び出していくところを見たかった。
うまく飛べなくてもいい。
少し不格好でもいい。
ピュアホワイトの畑から、小さな命が空へ向かう瞬間を見てみたかった。
でも最後には、その巣ごとなくなっていた。
空っぽの巣が残っていたわけではない。
残骸があったわけでもない。
巣も、ピュアちゃんも、何も見つからなかった。
そこにあったはずの小さな暮らしが、まるごと消えていた。
近くには、獣に狙われたような白とうもろこしがあった。
たぶん、とうもろこしを狙って来た獣が、その下にあった巣も見つけてしまったのだと思う。
こちらからすれば、獣は敵だ。
せっかく育てた白とうもろこしを倒し、食べ、荒らしていく。
生活がかかっている以上、きれいごとだけでは済まない。
けれど、その獣もまた、生きるために畑へ来ている。
ホオジロも、生きるために巣を作った。
とうもろこしも、生きようとして実を太らせている。
命を育む畑に、命が消える出来事も起きる。
その当たり前のようで、どうにも割り切れない現実だけが、畑の中に残っていた。
守れなかったけれど、見ていたことは残る
正直、自分に何ができたのかはわからない。
巣を守ろうとして、人間が手を出しすぎれば、親鳥が警戒して戻らなくなるかもしれない。
かといって、何もしなければ、今回のように獣に見つかってしまうこともある。
全部を守ることなんてできない。
白とうもろこしも、畑も、生活も守らなければいけない。
それでも、そこに生まれた小さな命も、できることなら守りたかった。
ピュアちゃん。
そう呼ぶようになった時点で、たぶんもう、ただの野鳥の雛ではなくなっていた。
畑の中で見つけた、小さな同居人みたいな存在だった。
農業をしていると、命に近い場所にいるなと思うことがある。
種をまけば芽が出る。
雨が降れば伸びる。
日照りが続けば弱る。
虫に食われる。
獣に倒される。
実ったものを、自分の手で収穫する。
命を育てているようで、命の奪い合いの中にいる。
その現実は、ときどき残酷で、ときどき美しい。
白とうもろこし畑にできた小さな巣。
2羽いた雛が、1羽になり、最後には巣ごと消えていた。
9日だけ見守った、ピュアちゃん。
ただそれだけの出来事かもしれない。
でも、自分の中には妙に残っている。
畑は、人間だけの場所ではない。
命を育む畑に、たしかにピュアちゃんがいた。
そして、知らないうちに消えていった。
守れなかった。
でも、見ていた。
Substackに投稿していた写真や言葉を見返すと、あの9日間だけ、白とうもろこし畑の中に小さな物語があったのだと思う。
巣立つところは見られなかった。
それでも、ピュアホワイトの畑にいた、ピュアちゃん。
その名前だけが、今も少し胸に残っている。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。これからも、畑や日常生活で感じたことや、野菜づくりを通して見えてきた生き方の話を書いていきます。よかったらフォロー、無料購読登録してもらえるとうれしいです。
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自然界の厳しさを感じますね🥲
寂しいですが、私たちも自然に生かされてるとお思い、日々大切にしていこうと思いました!
そうか…
巣ごとなくなったのですね🥲