農家を10年やってきました。
野菜は、それなりにつくれるようになりました。
でも、いまだに難しいことがあります。
この野菜、いくらにしよう?
直売所では、自分で値段を決められます。
自由です。
でも、その自由がなかなか難しい。
10年やっても、値付けには迷います。
長く育てれば、高くなる?
野菜の値段には、栽培期間が関係しているようにも見えます。
僕が直売所で販売してきた感覚では、ほうれん草や小松菜のような葉物は、比較的短い期間で収穫できて、値段もそれほど高くありません。
逆に長く畑を使う野菜は、その間ずっと土地を占有します。肥料も使うし、草も生える。病害虫のリスクも増えます。
だったら、
畑にいる期間が長いほど、高くなる。
そんな法則がありそうです。
でも、ナスやオクラ、きゅうりはどうでしょう。
畑にいる期間は長いけれど、一度収穫して終わりではありません。同じ株から何度も収穫できます。
さらにラディッシュは、短期間で収穫できるのに、小さな束でもそれなりの価格で売れます。
あれ?
もう栽培期間だけでは決められません。
じゃあ、珍しい野菜なら高く売れるのか。
ルッコラ、赤水菜、サラダ大根、サラダカブ。
こういう野菜は、ほうれん草や小松菜、大根ほど大量に消費されるわけではありません。でも、比較的いい値段をつけやすい。
僕はこのあたりを、「ほどよく珍しい野菜」だと思っています。
ちょっとお洒落な居酒屋で出てくる、前菜のサラダを思い浮かべてください。
緑の葉っぱの中に、赤い水菜や色のついた大根、ちょっと変わったカブが入っている。
名前までは知らなくても、
「なんか、お洒落だな」
とは感じる。
ところが、もっと珍しくすれば、もっと高く売れるのかというと、そうでもありません。
たとえば、スイスチャード。
……と言われても、知らない人も多いですよね?
まさにそこです。
珍しすぎる野菜は、売り場に並べても、
「これ、どうやって食べるの?」
となってしまう。
パクチーくらい知名度があっても、好き嫌いが大きく分かれます。
珍しさは価値になる。
でも、珍しすぎると買う人そのものが少なくなる。
この境目が難しい。
一人農家は、ずっと値付けを試している
定番野菜は売れやすいけれど、作っている農家も多い。
ほどよい珍しさは値段にも反映しやすい。でも、珍しすぎれば買う人そのものが少なくなる。
さらに一人農家の場合、たくさん売れたとしても、収穫、調整、袋詰め、納品まで一人で回せなければ続きません。
だから、作ってみる。
値段をつけて、売ってみる。
売れなかったら減らす。
売れたら増やす。
すると、今度は余る。
値段を変える。時期を変える。品目を変える。売り場を変える。
「売れる値段」と「続けられる値段」は、同じとは限りません。
そんなトライアンドエラーを10年間繰り返してきました。
こんな実験ができるのも、都市近郊で複数の直売所を使える環境があるからです。
市場出荷が中心なら、自分で値段を決める場面は少ない。僕のような売り方が、どこでもできるわけではありません。
そういえば、京セラを創業した稲盛和夫さんに、「値決めは経営である」という有名な言葉があります。
もちろん、京セラと僕の小さな畑を並べて語ろうという話ではありません(笑)。
ただ、10年間、直売所で野菜に値段をつけてきて、この言葉の意味をほんの少しだけ実感できるようになった気がします。
高くすれば売れないかもしれない。
安くすれば売れるかもしれない。
でも、それで利益は残るのか。
値段を決めることは、自分の農業をどう続けるかを決めることでもある。
だから、値付けは難しい。
小さなマーケットで学んだこと
振り返ってみれば、僕は野菜をつくりながら、小さなマーケットでずっと値付けの実験をしてきたのかもしれません。
そして最近、Substackで発信を始めて、ふと思いました。
これ、野菜と同じかもしれない。
みんなが知っていることだけでは、埋もれるかもしれない。
かといって、珍しすぎても誰にも届かないかもしれない。
もしかすると発信も、「ほどよく珍しくて、ちゃんと誰かが欲しいもの」を探すことなのかもしれません。
ちょっとお洒落な居酒屋のサラダに入っている、赤水菜くらいがちょうどいい。
10年間、小さなマーケットでトライアンドエラーしてきました。
野菜は、それなりにつくれるようになった。
でも、値付けはまだ難しい。
そして今度は、Substackという新しい場所で、また試行錯誤しています。
何に、どれくらいの価値を感じてもらえるのか。
まだまだ学ぶことは、たくさんありそうです。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。これからも、畑や日常生活で感じたことや、野菜づくりを通して見えてきた生き方の話を書いていきます。よかったらフォロー、無料購読登録してもらえるとうれしいです。
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