一本500円。その一本に、いくつの意味があるんだろう。
500円は、その一本の「価格」
とうもろこし一本、250円。
一番高いときには、500円で売ることもあります。
時期や売り方によって、値段は変わります。
250円。
500円。
値札をつければ、それが一本のとうもろこしの「価格」になります。
高いと思う人もいるでしょう。
安いと思う人もいるでしょう。
でも畑で一本のとうもろこしを手に取っている僕には、その値段とは少し違うものも見えています。
皮の上から握って、実の入りを確かめる。
先まで粒が入っているかな。
ちゃんと甘くなっているかな。
食べた人は「おいしい」と言ってくれるかな。
春から何カ月も育ててきたので、収穫するときには、一本一本が少しだけ作品のようにも見えます。
これは、おいしいものを作りたい「農家」としての僕の目線です。
でも、その一本を収穫した瞬間。
もう一人の僕が出てきます。
「今日は何本あるかな。」
「この値段で何本売れるかな。」
「今日の売上はいくらになるかな。」
こちらは、農業を事業として続ける「農業者」としての僕です。
「おいしい」と「値段」の間
農家の僕は、一本を見ています。
農業者の僕は、畑全体を見ています。
農家の僕は、
「もっと甘くなれ。」
と思っています。
農業者の僕は、
「あと何本売ればいい。」
と考えています。
どちらも僕です。
一人で農業をやっていると、この二人が一日の中で何度も入れ替わります。
畑では味を気にしていたのに、作業場に戻れば本数を数える。
納品すれば売上を見る。
そして、お客さんから、
「すごく甘かったです。」
と言われれば、また農家の僕に戻ります。
おいしいものを作りたい。
でも、農業を続けるためには利益も必要です。
だから、ときどき思います。
一本のとうもろこしって、いったい何なんだろう。
一本なのに、見る人によって違う
僕が畑から送り出したあとも、その一本の見え方は変わっていきます。
スーパーにとっては、売り場に並べる商品。
料理人にとっては、一皿を作るための食材。
食品メーカーにとっては、商品を生み出すための原材料です。
でも家庭に届けば、また違います。
夕飯の一品になるかもしれない。
子どもが生でかぶりついて、
「甘っ!」
と驚く一本になるかもしれない。
家族で食べた夏の記憶として残ることもあるでしょう。
同じとうもろこしなのに、不思議です。
価格。
商品。
食材。
原材料。
売上。
おいしさ。
誰かの思い出。
見る場所が変わるだけで、同じ一本が違う顔を見せます。
考えてみれば、野菜だけではないのかもしれません。
同じものでも、立つ場所が変われば見え方も変わる。
畑にいると、ときどきそんな当たり前のことに気づかされます。
「続けられる」と「続けたい」の間
そして結局、僕はまた畑に戻ります。
一本を手に取って、
「いい出来だな。」
と思う。
そして次の瞬間には、
「これをいくらで、何本売れるだろう。」
と考えている。
売上や効率を考えることも、農業を続けていくためには必要です。
でも、それだけで「また来年も作ろう」と思えるかというと、僕は少し違います。
お客さんから、
「今年もおいしかったです。」
「こんな甘いとうもろこし、初めて食べました。」
そんな言葉をもらうと、やっぱりうれしい。
また来年も作ろう。
もっとおいしくしてみよう。
そんな気持ちになります。
逆も同じです。
どれだけ「おいしい」と言ってもらえても、利益が残らなければ農業そのものを続けられません。
利益がなければ、農業は続けられない。
でも、
「おいしい」がなければ、僕は農業を続けたいと思えない。
一人農家として、僕はずっとその二つの間にいます。
もっとおいしくしたい。
ちゃんと利益も残したい。
お客さんに喜んでもらいたい。
自分の生活も成り立たせたい。
10年農業をやっていても、そのちょうどいい場所がどこなのか、僕にはまだよく分かりません。
だから今も、
作って、
売って、
食べてもらって、
また考える。
その繰り返しです。
一本250円のときもある。
500円のときもある。
価格は変わります。
でも、その一本の中で、
「続けられる農業」と「続けたい農業」が重なる場所を、僕は今も畑で探しています。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。これからも、畑や日常生活で感じたことや、野菜づくりを通して見えてきた生き方の話を書いていきます。よかったらフォロー、無料購読登録してもらえるとうれしいです。
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アップルヒルさん、こんにちは😊
今回のお話、すごく共感です。
自分は農業で商売はしていませんが、家庭菜園で感じてる悩みや喜びはまさに今回の内容と一緒だなと思います。
作る理由は家族に美味しく食べてもらいたいから、そしてだんだんこれを拡張していった先に果たして、これは事業としてやっていけるのか?と考える瞬間もあります。
でも、とても無理だと感じました💦😱
生産者と経営では相反するものがあるかもしれませんが、これからもみんなの喜ぶものを作って欲しいです😊